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「スポーツ・フォー・オール」の理念を共有する国際機関や日本国外の組織との連携、国際会議での研究成果の発表などを行います。また、諸外国のスポーツ政策の比較、研究、情報収集に積極的に取り組んでいます。

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日本のスポーツ政策についての論考、部活動やこどもの運動実施率などのスポーツ界の諸問題に関するコラム、スポーツ史に残る貴重な証言など、様々な読み物コンテンツを作成し、スポーツの果たすべき役割を考察しています。

セミナー「子供のスポーツ」

自治体スポーツ施策の実施主体に関する実態調査2023の結果(速報版)

3期スポーツ基本計画(20223月策定)に掲げられている「スポーツそのものが有する価値」と「スポーツが社会活性化等に寄与する価値」をさらに高め、より生かすべく、全国の自治体においてスポーツ諸施策が精力的に展開されている。その一方で、それぞれの自治体がそれら施策のなかで具体的に公費を投入している取り組みはどのようなものなのか、その実施を担っているのはどのような主体なのか、好事例が紹介・共有されることはあっても、全体像は必ずしも明らかではない。

そこで、笹川スポーツ財団では、自治体におけるスポーツ施策実施の実態把握と課題解決のための基礎資料とすべく、全市区町村を対象として「自治体スポーツ施策の実施主体に関する実態調査(2023年度)」を20242月に行った。まずは速報版として、回答を取りまとめたものを以下のとおり示すこととする。なお、市区町村別や人口別の状況などを踏まえた詳細な分析については、夏頃を目途に公表することを予定している。

研究代表者:上席特別研究員 熊谷哲

調査対象及び回答状況

全国の市町村1,712団体(全1,718団体から能登半島地震の被害状況等を踏まえ石川県の6市町を除外している)及び東京都特別区23団体の計1,735団体に調査票を送付し、回答を依頼した。期限までに回答をいただいたのは968団体であり、回収率は55.8%となった。

スポーツ施策の実施状況

スポーツ施策の実施状況を把握するため、回答の選択肢として、当該自治体における予算(当初予算または補正予算)措置の有無と取り組み実施主体との組み合わせから、①予算措置あり×スポーツ施策主管部署、②予算措置あり×庁内他部署、③予算措置あり×スポーツ・体育協会、④予算措置あり×当該自治体の(スポーツ・体育協会以外の)外郭団体、⑤予算措置あり×その他法人、⑥予算措置なし×スポーツ・体育協会、⑦予算措置なし×当該自治体の(スポーツ・体育協会以外の)外郭団体、⑧予算措置なし×その他法人、⑨予算措置なし×実施団体なし、の9項目を設定した。

設問は、スポーツ活動に必要な基礎的条件を整備・提供する基本的スポーツサービスと、基本的スポーツサービスを支える、あるいは拡張する関連的スポーツサービスとに大別した。さらに、基本的スポーツサービスについては、施設や場所等の条件整備としてのエリアサービス、活動集団の育成や持続的運営等の条件整備としてのクラブサービス、機会創出や活動内容の条件整備としてのプログラムサービスの3つの観点により整理した上で、関連的スポーツサービスとともに各自治体における状況を尋ねた。

今回の速報版においては、設問ごとに得られた結果について、当該自治体において予算措置がなされ実施主体があることを意味する「予算あり」の5区分に回答した自治体、当該自治体において予算措置はなされていないものの独自の実施主体があることを意味する「予算なし×実施主体あり」の3区分に回答した自治体、自治対予算の有無にかかわらず実施主体がなく住民に全く提供されていないことを意味する「実施主体なし」と回答した自治体の3つに分類し、それぞれの概要を示した。(複数回答可としているため、「予算措置あり」と「予算措置なし×実施主体あり」の両方に回答することもあり得ることから、3分類の合計が100%とはならない)。

エリアサービスに関する回答内容

・【住民の日常的なスポーツ活動のための施設の運営に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは97.5%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは3.6%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の81.2%であり、次いで「スポーツ・体育協会(以下、「スポ協」とする)」の18.7%、「その他法人」の17.8%、「庁内他部署(以下、「他部署」とする)」の12.2%であった。「実施主体なし」は2.0%であった。

・【競技者の養成や競技力向上に特化した施設の運営に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは35.3%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは6.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の22.5%であり、次いで「スポ協」の11.5%であった。「実施主体なし」は59.7%であった。

・【障害者が優先して利用できる施設の運営に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは27.2%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは3.9%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の15.4%であった。「実施主体なし」は69.2%であった。

・【学校体育施設の開放事業に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは90.9%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは3.0%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の71.2%であり、次いで「他部署」の21.4%であった。「実施主体なし」は6.9%であった。

クラブサービスに関する回答内容

・【総合型地域スポーツクラブの活動支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは53.6%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは12.5%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の44.4%であった。「実施主体なし」は34.5%であった。

・【スポーツ少年団の活動支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは86.2%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは7.2%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の66.2%であり、次いで「スポ協」の28.2%であった。「実施主体なし」は8.4%であった。

・【プロスポーツや実業団チームとの連携事業や活動支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは51.4%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは7.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の43.1%であった。「実施主体なし」は43.0%であった。

・【民間のスポーツクラブやサークルとの連携事業や活動支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは39.7%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは6.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の27.0%であり、次いで「スポ協」の11.3%であった。「実施主体なし」は54.6%であった。

プログラムサービスに関する回答内容

・【住民を対象とした競技スポーツの大会やイベント(学校は除く)の開催に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは96.7%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは9.7%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の79.0%であり、次いで「スポ協」の49.2%、「外郭団体」の10.2%であった。「実施主体なし」は1.7%であった。

・【住民以外を主な対象とした競技スポーツの大会やイベントの開催に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは45.5%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは7.2%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の30.9%であり、次いで「スポ協」の12.3%であった。「実施主体なし」は49.2%であった。

・【小学生以下の子どもの体力向上やスポーツの習慣化(校内・園内活動を除く)に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは68.4%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは11.5%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の43.2%であり、次いで「スポ協」の16.0%、「他部署」の10.6%、「その他法人」の10.0%であった。「実施主体なし」は25.0%であった。

・【住民の健康増進や介護予防を目的としたスポーツ活動に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは88.5%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは8.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「他部署」の48.2%であり、次いで「自部署」の48.2%、「スポ協」の13.5%であった。「実施主体なし」は8.1%であった。

・【トップアスリートの育成や競技者の競技力向上に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは39.7%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは10.8%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の24.7%であり、次いで「スポ協」の19.4%であった。「実施主体なし」は52.4%であった。

・【競技性を追求しないスポーツの楽しさの体験や習慣化に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは81.0%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは10.6%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の63.7%であり、次いで「スポ協」の21.2%、「外郭団体」及び「その他法人」の10.3%であった。「実施主体なし」は13.6%であった。

関連スポーツサービスに関する回答内容

・【スマホアプリを活用したスポーツ・運動実施に関する情報提供やポイント付与等に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは28.4%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは5.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「他部署」の20.8%であった。「実施主体なし」は66.3%であった。

・【競技者や指導者の顕彰・表彰制度を恒常的に設けて取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは80.1%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは10.0%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の47.5%であり、次いで「スポ協」の38.6%、「他部署」の12.5%であった。「実施主体なし」は14.4%であった。

・【スポーツ指導者の育成のための研修・講習や受講支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは69.1%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは11.6%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の40.3%であり、次いで「スポ協」の30.6%であった。「実施主体なし」は22.5%であった。

・【スポーツボランティア養成のための研修・講習や受講支援に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは19.1%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは5.2%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の12.3%であった。「実施主体なし」は75.8%であった。

・【スポーツ合宿の誘致やスポーツツーリズムの誘客活動に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは38.8%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは6.2%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の25.2%であり、次いで「他部署」の11.1%であった。「実施主体なし」は56.7%であった。

・【国際大会や全国規模の大会、プロ競技の公式試合等の招致活動に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは22.5%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは4.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の15.9%であった。「実施主体なし」は73.3%であった。

・【スポーツを通じた国際間・地域間交流(観光誘客を除く)に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは30.8%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは5.4%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の21.8%であった。「実施主体なし」は65.2%であった。

・【スポーツ振興に関する審議会等の常設機関の設置・運営に取り組んでいますか】という問いに対して、「予算あり」と回答したのは56.8%、「予算なし×実施主体あり」と回答したのは1.9%であった。予算ありのうち、実施主体として最も多かったのは「自部署」の54.5%であった。「実施主体なし」は41.8%であった。

スポーツ協会に関する回答内容

自治体のスポーツ施策の推進はもとより、地域におけるスポーツ推進の中核を担う主体として大きな役割を担っているスポーツ・体育協会の運営状況についても調査を行った。回答結果の概要は以下のとおりである。

・【法人格について教えてください】との問いに対して、最も多かったのは「任意団体」の64.7%、次いで「NPO法人」の9.4%、「一般(財団・社団)法人」の8.2%であった。「公益(財団・社団)法人」は8.1%であった。

・【自治体からの出資・出捐金はありますか】との問いに対して、「出資・出捐している」との回答は20.1%、「出資・出捐していない」は79.0%であった。

・「出資・出捐している」とした自治体の出資・出捐金総額は、選択肢とした「50万円以下」から「1億円以上」まで幅広く分布し、最も多かったのは「100万円〜500万円未満」の34.9%、次いで「1,000万円〜5,000万円未満」の15.4%、「50万円〜100万円未満」の14.9%であった。

・【事務局運営に自治体職員が携わっていますか】との問いに対して、最も多かったのは「事務局は庁内に設置され、自部署または他部署が担っている」の50.9%、次いで「事務局は独立しており、自治体職員は運営に直接携わっていない」の40.8%であった。

・【中期計画等を策定していますか】との問いに対して、「策定している」のは6.1%、「策定していない」のは93.4%であった。

・「中期計画を策定している」スポーツ・体育協会のある自治体のうち、「必要に応じて指導・監督している」のは69.5%、「報告を受けているが指導・監督はしていない」のは22.0%、「一切関与していない」のは8.5%であった。

・【運営費補助(指定管理や、特定事業の委託・補助を除く)を行っていますか】との問いに対し、「行っている」のは78.6%、「行っていない」のは21.2%であった。

・「運営費補助を行っている」とした自治体の補助金総額は、選択肢とした「50万円以下」から「1億円以上」まで幅広く分布し、最も多かったのは「100万円〜500万円未満」の47.8%、その他では「50万円未満」「50万円〜100万円未満」「500万円〜1000万円未満」「1,000万円〜5,000万円未満」が10%台で並んだ。


熊谷 哲 論考

  • 熊谷 哲 熊谷 哲 上席特別研究員
    1996年、慶應義塾大学総合政策学部卒業。岩手県大船渡市生まれ。
    1999年、京都府議会議員に初当選(3期)。マニフェスト大賞グランプリ、最優秀地域環境政策賞、等を受賞。また、政府の行政事業レビュー「公開プロセス」のコーディネーター(内閣府、外務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、環境省など)を務める。
    2010年に内閣府に転じ、行政刷新会議事務局次長(行政改革担当審議官)、規制・制度改革事務局長、職員の声室長等を歴任。また、東日本大震災の直後には、被災地の出身ということもあり現地対策本部長付として2か月間現地赴任する。
    内閣府退職後、(株)PHP研究所を経て、2017年4月に笹川スポーツ財団に入職し、2018年4月研究主幹、2021年4月アドバイザリー・フェロー、2023年4月より現職。
    著書に、「よい議員、悪い議員の見分け方」(共著、2015)。